親子で揃えたい!世代を超えて使えるデザイナーズ家具
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しけたむ
インテリアの仕事に携わっていると、さまざまな魅力的な家具の中に子供用の小さな家具を見かけることがあります。
子供用の家具って、大人用の家具をそのまま小さくしたような可愛いサイズやカラフルなカラーリングがあるので、見ているだけでわくわくします。
子供部屋があったら、デスクに収納、かわいいアートなど、きっとたくさん置きたくなってしまうでしょう。
ところが、かわいい家具たちの活躍はいつまでも続きません。
子供たちの成長による趣味嗜好の変化から、その多くはどこかへ片付けられたり捨てられたりしてしまうことがあります。
親の立場でも子供の立場でも、皆さんこのような経験があるのでは無いでしょうか。
私の実家には2つ上の兄が赤ん坊の頃から使っていた木製のベビーチェアが今も置かれていますが、私たち兄弟が子供を連れて実家に帰った際には、このベビーチェアはまだまだ現役として大活躍しています。
ベビーチェアに残る古い傷やぺたぺたと貼られたシールを見ると、小さい頃の思い出が蘇ってノスタルジックな気分になり、「自分が使ってた家具を、今は自分の子供が使ってるのかあ・・・。」と、なんとも言えない感慨深い気持ちが込み上げてきます。
シンプルなデザインながら頑丈な実家のベビーチェアは、子供達のさらにその先の世代へも残せていけそうです。
このように「家具を受け継いで使う」という発想は海外では当たり前に行われていて、デザイン大国デンマークではその傾向が顕著です。
デンマークは外の寒さに加えて夜が長いため、必然的に自宅での生活時間が長くなります。
その為、座りやすく快適な椅子やソファを選ぶことは何よりも大事で、彼らはまるでパートナーを選ぶかのように真剣に家具をセレクトし、宝物のように丁重に扱うそうです。
厳しい寒さの中でも暖かく心地よい生活を送りたいという想いから『Hygge(ヒュッゲ:暖かく居心地の良い雰囲気を表すデンマークの言葉)』という言葉が生まれ、大切な家具を次の世代へと引き継ぐ文化が育まれたのです。
自分のパートナーのようにお気に入りのデザインの家具を子供と共有できて、さらに次の世代へ引き継げたらどうでしょう。
きっと楽しかった思い出も共有できて、家具に対してもますます愛着が湧いてくるのでは無いでしょうか。
そんなわけで前置きが長くなりましたが、今回は『親子で揃えたい!世代を超えて使えるデザイナーズ家具』をご紹介させて頂きます。
親子で揃えたい!世代を超えて使えるデザイナーズ家具
CHILDREN’S CHAIR N65(アルヴァ・アアルト )
『CHILDREN’S CHAIR N65』は、1935年にフィンランドを代表する偉大な建築家でありデザイナーの「アルヴァ・アアルト」によってデザインされた子供用チェアです。
飽きのこないシンプルですっきりとした丸みを帯びたデザインと、フィンランドで採れるバーチ材を生かした暖かみを感じる素材感が特徴です。
やや低めの背もたれはテーブルや机の下に椅子をしまいやすく、人の身体に沿うような緩やかなカーブは腰掛ける人の背中を優しく受け止めます。
このチェアのもう一つの特長は、耐久性の高い「L型に曲げられた脚部」にあります。
通常、木を曲げる際には「成形合板(せいけいごうはん)」と呼ばれる、薄くスライスした木材に接着剤を付けて重ね合わせ、加圧機によってプレスして形を作る技術が用いられるのが一般的ですが、アルヴァ・アアルトは長い年月をかけ、硬く分厚い木材をそのまま曲げる技術『L-Leg(エルレッグ)』を開発しました。
この技術により、強度が高く、長く使っても狂いの少ない家具が実現したのです。
気になるサイズは幅350mm、奥行き380mm、高さ600mmで、座面の高さは375mmとなっています。
カラーバリエーションは「ブラック」、「ホワイト」、「ナチュラル」という3色が用意されていて、どのようなインテリアにも自然にマッチするようなカラーリングもポイントが高いですね。
アルヴァ・アアルトは『CHILDREN’S CHAIR N65』の発売と同時に、大人用の同デザインチェア『CHAIR 65』を発表しています。
家族でお揃いの家具を楽しんで欲しいというアアルトの願いが聞こえるかのようです。
▲大人用チェア『CHAIR 65』は子供用よりさらに多くのカラーがある。サイズは、幅350mm、奥行き400mm、高さ660mm、座面高さ435mm。
どちらのチェアも、フィンランドの家具メーカー『Artek(アルテック)』より販売されています。
SERIES 7 CHILDREN’S CHAIR(アルネ・ヤコブセン )
▲『SELIES 7 CHILDLEN’S CHAIR』のカラーバリエーションは、左から「ブラック」、「ローズ」、「ラベンダーブルー」の3色
『SELIES 7 CHILDLEN’S CHAIR』は、デンマークの建築家でありデザイナーの「アルネ・ヤコブセン」によって1955年にデザインされた「セブンチェア」の子供用バージョンです。
セブンチェアとは「世界で一番売れたスタッキングチェア」というキャッチコピーがあるほど有名なアルネ・ヤコブセンの最高傑作のひとつで、きっと誰もがどこかで見かけたことがあるのでは無いでしょうか。
その可愛らしい見た目も大きな特徴と言っても良いのですが、特筆すべきは椅子の掛け心地です。
セブンチェアの座面には9枚のスライスした木材を加圧機でプレスして形作られた成形合板が用いられていて、腰掛けて背中を預けると心地よい「しなり」による柔らかさを感じることができて、長く座っていても疲れません。
▲大人用チェアとのサイズ比較。植物の鉢を置いたり、サイドテーブルとして飾ってもかわいいかも。(※写真のカラーは取り扱いを終了しています。)
選べるカラーバリエーションは「ローズ」、「ラベンダーブルー」、「ブラック」の3色。
サイズは、幅400mm、奥行き420mm、高さ600mmで、座面の高さは340mmとなっています。
もともと小さなサイズのチェアですが「スタッキング」、つまり重ね置きが出来るのがとってもありがたい!
複数脚を所有していても、場所に困らずしまっておけますね。
▲スタッキングされた状態のセブンチェア。(※ホワイトカラーは取り扱いを終了しています。)
セブンチェアはデンマークの家具メーカー『FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン )』にて取り扱っています。
Panton Junior(ヴェルナー・パントン)
『Panton Junior(パントンジュニア)』は、アルネ・ヤコブセンの元で建築を学んだ20世紀を代表するデンマーク人デザイナー「ヴェルナー・パントン」によって2006年にデザインされました。
もともとはヴェルナー・パントンによって1960年にデザインされた彼の代表作でもある「パントンチェア」のデザインをそのままに、約25%縮小したものが「パントンジュニア」となります。
▲パントンチェア(右)とパントンジュニア(左)の大きさ比較。パントンジュニアの小ささがよく分かります。
パントンチェアのボディは、プラスチックの一種である「ポリプロピレン」だけで作られています。
そのような家具は現代では当たり前ですが、じつはパントンチェアは世界で初めてプラスチックだけで作られた椅子なんです。
プラスチックを利用することにより今までに無いデザインや座り心地を実現することが可能になり、まさに「デザイン業界の革命」として発売時は世界中に衝撃を与えたそうです。
そしてパントンチェアの脚、変わったかたちをしていますよね。浮いたようなデザイン。
これは「カンチレバー(キャンティレバー)構造」と呼ばれるもので、例えるとプールの飛び込み台のように片側が固定され、反対側は動くことのできる片持ちの構造のことです。
この構造により、腰掛けた時にわずかに弾むような「しなり」が生まれ、心地よい座り心地を実現しています。
▲背もたれから脚部まで流れるようなデザインはまるで彫刻作品のよう。デザインに全く無駄がありません。
もう説明不要ですよね、このかわいさ。
このような紹介記事を書いているとどんどん欲しくなってしまうのは困ったものです笑
パントンジュニアのカラーバリエーションは「ホワイト」、「ゴールデンイエロー」、「ペールローズ」、「クラシックレッド」、「ソフトミンク」、「シーブルー」の6色でとってもカラフルなのも魅力的。
サイズは幅376mm、奥行き446mm、高さ628mm、座面の高さは348mmとなっていて、スタッキングも可能です。
パントンジュニアは、スイスの家具メーカー『Vitra(ヴィトラ)』にて取り扱っています。
LOU LOU GHOST(フィリップ・スタルク)
『LOU LOU GHOST(ルールーゴースト)』はフランス人デザイナー「フィリップ・スタルク」がデザインしたチェアで、2002年に発表された『LOUIS GHOST(ルイゴースト)』の子供用バージョンです。
ルイゴーストは18世期のフランス国王「ルイ15世」の名前から名付けられたことからも解るように、当時流行していた華麗でクラシカルな美術様式「ロココ様式」の代表的な椅子のデザインを、フィリップ・スタルクにより現代的にアレンジしたものなのです。
耐久性・耐熱性に優れ、透明性の高い「ポリカーボネート樹脂」というプラスチックの一種が用いられていて、存在感のある見た目ながら透明であるため、部屋に置いても圧迫感を受けにくく、どのようなインテリアにも馴染みます。
▲『ルイゴースト』をダイニングルームに置いたイメージ。まるで椅子の幽霊(ゴースト)がそこに浮いているみたい。
ルールーゴーストは、ルイゴーストの素材や形状、耐久性はそのままに、小さいながらも大人用と同じく上品な佇まいを残したキッズチェアです。
ファブリックやレザーと違って、水をこぼしても大丈夫ですし、マジックやクレヨンで落書きしても簡単に綺麗になるのって素晴らしく無いですか?
この写真を見てください。なんかもう置いてあるだけで気品を感じるデザインですよね。
また、ルールーゴーストのカラーバリエーションには、フィリップ・スタルクの遊び心に溢れたカラフルカラーが豊富にラインナップされていて、こちらから確認ができます。
一見、スタッキング出来なそうなフォルムですが、なんとできます!
▲人気カラーはすぐに売り切れてしまうので、在庫状況は購入前にメーカーに確認が必要。
ルールーゴーストのサイズは幅400mm、奥行き370mm、高さ630mmで、座面の高さは320mmとなります。
販売はイタリアのインテリアブランド『Kartell(カルテル)』にて行っています。
まとめ
4つの著名なデザイナーの家具を紹介してきましたが、語り継がれる偉大なデザイナーたちの作品には、語り継がれるべき理由があります。
それはおそらく「価格がお手頃だから」では無く、「高度な機能性を有しているから」でも無く、「有名な家具ブランドから販売されているから」でも無い。
それは「高いデザイン性と誰でも安心して使いやすい、快適な家具だから」なのだと思います。
デザイン大国デンマークの人々は、家具を一目惚れで買わないと言います。
何度も通って、触り、腰掛けて、確かめてから買うのです。
それはまさに生涯のパートナー選びと同じです。
私たちが家具に求めているものはそれぞれですが、どうせなら長く使えて、それでいて心地よく、自身のパートナーのように愛すべき家具を使いたいですよね。
そんな愛すべき家具を、愛すべき人が受け継げたら・・・。
皆様の人生が心地よく気持ち良いものでありますように。
この記事を書いた人
しけたむ
横浜市出身のしし座の亥年。 家具のデザインからスタイリングまで何でもこなす、インテリア業界ひとすじのコーディネーター。 ヨーロッパを放浪しながら各地の家具見本市や展示会を渡り歩き、現在は都内を中心にフリースタイリストとして活動中。